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「自由主義のほころび」とは? - 2020年代における創造性 その2

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前回、「紡がれてきた大きな物語が綻びを見せ始め、先が見えない時代が始まるであろう」みたいな話をしました。なんだか村の祈祷師ばあさんの戯言預言みたいで聞く耳を持ちにくいんだが、一体全体どういうこと? というのが今回です。

その大きな物語ってのは、自由主義のこと。 自由主義は現代で最も信仰されているイデオロギー。

「いや信仰って。私は何の宗教も信じてねーし」っていう人もいるかもしれない。 まぁ、キリスト教とかユダヤ教とか宗教を信じている人は、もうその宗教が当たり前の当然の摂理なので、その宗教を「物語だ」なんて言われるのは腹立たしいことでしょう。

現代の日本人にとって自由主義が、それに同じ。

「人権!平等!自由!」って当然のように感じるかもしれないけど、これ200年前くらいにできた自由主義という物語の設定の一つだからね。キリスト教の人に、創造主ってのは2000年前くらいにできた聖書っていう神話の設定の一つだからね、と言うのと同じ構図なわけなのよ。

なので、まずはその自由主義について説明する。 ユヴァル・ノア・ハラリ著の「21 Lessons」がうまくまとまっていたので引用で。

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

自由主義とは

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ユヴァルによると自由主義は上の図のようなセットメニューであるとのこと。 3x2のマトリックスになっているのがそのセットの構成。

それぞれのメニューが他のメニューに紐付いている。 個人の自由を主張する政治家が自由選挙によって選ばれる、自由貿易には国際平和も欠かせない、みたいな離れ離れになれないメニューなわけ。

それぞれへの紐付きで自由主義はますます強固になっていき、確固とした物語として紡がれてきた、ってこと。

自由主義のほころび

で、これがどうやってボロボロと綻んできたかって話。 下の図のように、それぞれの自由のメニューが壊れ始めてきているのだ。

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顕著な例でいうとトランプ大統領。 声の大きい人が勝ちというポピュリズムによって、1人1票という民主主義的な自由選挙の不具合である「感情が煽られ投票した人でも過半数を超えると当選」っていうので選ばれたのが、「他国との関係よりも古き良きアメリカを取り戻すのが大事!」という国家主義者のトランプ大統領なのだ。

このようにして、メニュー単品が成り立たなくなると、セットメニューでなければ辻褄が合わない自由主義は、綻んでいきましたとさ。

かと言ってそれぞれの国は、自由主義と同じ人間中心主義の共産主義に戻ることも、中世の宗教国家システム、王族による封建国家システムに戻ることも望んでいない。

各国は何のイデオロギーで進むか決まっていないのだ。アメリカは国家間の協力を選ばず自国の自由経済を選び、中国は自由な政治は選ばず自由貿易を選び、ヨーロッパは移民の自由を選ばず個人主義を選ぶ。そんな感じで各国は、自由主義の単品メニューをビュッフェ形式がごとく選び続けている。矛盾を指摘することがいくらでもできる脆い状態なのだ。

メニューで自由市場資本主義は大人気。副作用で温暖化や生態系破壊などがガンガン進もうが経済は止まらないのだ。ロマンティックが止まらないように。胸が苦しくなる。

自由主義が完全には信じられなくなってきている。 これが、大きな物語のほころび。 自由主義の次が発見されておらず惰性で都合よくイデオロギーを利用している時代。 これが、先の見えない時代。

ってわけ。

こういう先の見えない時代こそ、新しい道を作り出す創造性というのが大事になってきている。

いざ、創造性を発揮しよう!

となると思うでしょ。ところがどっこい、そうじゃないのよ。

創造性も同時にほころぶ

創造性も自由主義にずっぷりだったわけ。 「心の自由のままに新しい価値を創り出そう!」っていうのが創造性のスローガンだったように、その心の自由、自由意志が欠かせないのが創造性。

しかし、その自由主義の根幹である自由意志すらも存在が怪しくなってきているのだ。

というわけで、今回はここまで。 次回は、自由意志が怪しくなってきているこれまでの創造性も怪しくなってきている、って話です。 科学的な話だよ、話は怪しくないよ。